この記事はJDLA E 2025 #2を受験した直後に記載し、合格通知が来てから公開しています。
この記事は人間が作成しています。誤字脱字チェックにのみAIを使用しています。
2025年の2月にE資格を受験する決意をし、半年の歳月をかけてようやく試験当日を迎え、合格に至りました。これからいくつかの記事に分けて、E資格の意義・対策の方法・出題の傾向・私が受講した講座についてなどの情報を公開していこうと思います。
これがE資格に興味をもった方々のためになれば幸いです。
私がE資格を受験した理由は言うまでもなく、E資格により得られるメリットがあると確信したからです。
初めてE資格に魅力を感じたのは昨年2024年、E資格ホルダーの方と採用面接でお会いした時でした。その方は40~50代くらいで、私よりもかなり年上の方でかつ、バイオインフォマティクス・データサイエンスについては直近数年だけ業務経験があるというご経歴でした。基本的に研究員の採用はスキルとご希望年収のバランスがとれていれば問題ないのですが、やはりご年齢が40代後半以上で業務経験が少ないのは他の多くの候補者さんと比較すると正直不利だと思います。しかしその方のご経歴の中でE資格ホルダーという項目が私には非常に魅力的に映りました。E資格は深層学習の基礎的知識のみならず、一定レベルのpytorch実装力が求められます。E資格ホルダーであれば基礎は抑えているな、というように、スキルレベルを示す良い資格だなと面接官目線で感じたわけです。
実際にE資格を受けてみると、思っていたほどの高いレベル感ではないな…と正直感じた部分はあるものの、やはり深層学習のスキルレベルを手軽に示すには非常に良い資格だと思います。E資格を取得すれば就活・転職の際には有利に働くことでしょう。特に、学生のうちに取得できれば就活で非常に有利になること間違いないと思います。
一方でE資格にはデメリットもあります。シンプルに資格取得の金銭的・時間的コストが高すぎます。次の項目ではそのデメリットが発生する仕組みを説明します。
私がE資格を得るまでのフローは以下でした。
以上のように認定講座費用と受験料が重くのしかかりますが、国の助成制度を使うことで57.420円の出費に抑えることができました。
これに加えてE資格の問題集 (白い方) や参考書をいくつか購入していますので、実際にはプラス1万円くらいはかかっています。全部で6万円超という金額はなかなかの出費ですから、誰にでもチャレンジできるものではない気がします。
専門型実践教育訓練給付について。非常にお得で素晴らしい制度なのですが、給付を受けるまでの流れが結構分かりにくいので、私の例を記しておきます。
おそらく「とにもかくにもまずはハローワークへ行って説明を受ける」というのが推奨のフローなのだろうと感じましたが、いちいちハローワークにまで足を運ぶのはどう考えても非効率的なので、さっさとキャリアコンサルティングを受けて、その後にハローワーク直行すればいいと思います。
私の場合は以下のような流れでした。
1月中旬にハローワークを訪問し、職員の方に給付の流れを説明していただく。
1月中旬にジョブカードを作成し、キャリアコンサルティングの予約をする。
2月中旬にキャリアコンサルティングを実施。
数日後キャリアコンサルティング結果をメールで受領。
3月中旬にDeepSquareにて受講開始。
3月下旬にハローワークを再び訪問。必要書類を得て無事申請完了。支給決定書などを受領。
8月上旬、さすがにそろそろ終わらせないとと焦り、修了課題と修了試験を完了。期限ぎりぎりの土日に修了申請を完了。
8月29日に試験を受験。
9月某日にハローワークを訪れ、必要書類の記入を職員に手伝っていただきながら70%分の給付を申請。
おそらく、困った時には講座運営者に問い合わせてみると進め方を詳しく教えてくれるはずです。
さてお察しの通り、E資格は日本ディープラーニング協会が認定した講座を受講し、修了しないと受験資格を得られないという謎システムです。しかも認定講座は10万円から20万円程度のものもざらで、受験料も3万円と高額です。どうしてこんなことになっているのでしょうか?
まず建前としては、試験内容が難しく、ちゃんとした教育機関で教育訓練を受けないとスキルが身につかないというのが、認定講座制度の存在意義と考えられます。確かに、ディープラーニングは手を動かしてコード書いてなんぼ、その中で色々ノウハウがあるというものですから、教科書では全てを説明しきれないでしょう。
とはいえ、あくまで私の感覚としては「コンピューターサイエンス系の学士卒レベルが半年勉強すれば十分合格するレベル」だと思います。私は独学ではありますが、ディープラーニングやLLMについてはある程度知識があったため、そこまで難しい試験だとは思いませんでした。
本音としては国の助成金>企業・個人のスキル獲得推進>JDLA>教育に還元という巨大なお金と流れを作ることなのではないかと思います。この辺は某先生が旗振り役となってうまくやってらっしゃるなあと感じざるを得ませんが、あくまで教育のための資金を得る仕組みとして、健全かつ崇高な目的のもとに銭ゲバにも見えるやり方となっているのだろうと思います。
しかし、それにしてもCourseraと比較しても金額が倍くらい高いので、もう少し安くしてもいいんじゃなかろうかとは思います。
YoutubeやQiitaでの合格体験記を見ると「100-300時間くらいの勉強が必要」とのことですが、私の場合は暇な時間に色々な関連ドキュメントや動画を斜め読みしたりして理解を深めていたので、しっかり机にかじりついて勉強したのは100時間未満だったように思います。冒頭、私がE資格勉強に取り組んだ期間が約半年であると書きましたが、実際には6月ごろにClaude codeが出てからはがっつりAIコーディングにはまってましたので、約1か月~1.5か月は空白期間でした。それ以外の期間は認定講座の動画をぼーっと眺めて、理解できないところは他のコンテンツなどで理解を補うようなことをしていました。おそらくシラバスの内容を丁寧に追うと2-3カ月は最低でもかかるのではないかと思います。1 私は統計の勉強をかじったことがあり、AIについてもPytorchのコードを少しだけ触ったことがる程度でしたが、実際にはモデルのアーキテクチャや特徴・そのモデルのプロコンなどまで出題されますので、がっつりモデルの動作を一通り理解しながら進む必要があり、この作業に時間がかかりました。
言ってしまえば試験問題は全て暗記問題なので、極論暗記すれば合格できます。しかし出題範囲が本当に広いので、並大抵の記憶力の持ち主であれば、様々なモデルや学習方法の原理をよくよく理解しコンテクストとともに「身になる」勉強をしなければ、記憶の定着は難しいです。
一通りシラバスの内容を一次学習できた後、練習問題に取り組みました。まずは認定講座の修了試験が実戦形式の問題でしたので、この問題をとにかく繰り返し解きました。三週くらいすると問題に過学習してくるようになるので、次に問題集(黒本ではなく白本)を解きました。問題集は結構ボリューミーで、これを一通り終えるのに一週間以上かかりました。問題集を二週やったところで、白本の特典である実戦形式の問題を解き、その時点で八割得点できていたので、残りの時間はアクティブリコール2に費やし、適宜認定講座のコンテンツや問題集の解説文を眺めて確認していました。
シラバスの内容を一通りインストールするところまでは非常に大変なのですが、一度やり切ってしまえば、出題範囲・傾向がつかめてきます。根気よく最初は進めることが肝要です。
デロイトトーマツが運営するDeepSquareというところを選びました。理由は安かったからです。正直シラバスさえあれば独学でもできるんじゃないかと甘く考えていたので、最安を探した結果ここに落ち着きました。しかしその後、さらに安いStudy-AIのE資格認定プログラム(入会金2万円+月額3千円+税)を見つけました。比較的こちらも評判が良いようですし、費用を押さえたければStudy-AIの方がいいかもしれませんね。
DeepSquareでは、機会音声でパワポスライドを解説した動画がメインのコンテンツになります。動画コンテンツは結構ボリュームがあり、試験内容のカバー率は75%くらいはいってるんじゃないかと思います。シラバスに書かれている項目はもちろん押さえているのですが、細かいモデルアーキテクチャや計算コストの問題は認定講座外のコンテンツで勉強する必要があります。
また、他の認定講座では**「修了試験の難易度が高い」**と言ったコメントが散見されますが、DeepSquareもそれなりに難しかったです。前述の問題形式に加え、配布されるipynbで実際にpytorchでモデルトレーニングをする課題があるのですが、合格基準の精度を達成するのは簡単ではなかったです。私はGeminiを使いながら取り組んだのですが、結局Geminiのいう通りにしてもほとんど精度は上がらず、独自に工夫をする必要がありました。こうした課題の難易度から顧みるに、大変に素晴らしい難易度設定だったと思います。
一点だけ不満があるのは、認定試験の解答に誤り/問題設定に不備があるように思える問題がいくつかあったことです。修了試験は何度もリトライできるとは言え結構シビアな合格ラインが設定されてますので、問題の不備で2-3問を必ず失うというのは理不尽に感じました。この点についてはアンケートで具体的な問題を挙げたうえでフィードバックさせていただきましたので、今後受講される方のバージョンでは修正されていることを祈ります。
もう一方のスキルアップAI社が著者となっている有名な黒本は2025年9月現在最新シラバスに対応していないので注意が必要です。私は断然こちらの白本の方をおすすめします。
2024年末に更改された新シラバスに対応した問題集です。
本書が問題集に過ぎないのは間違いないですが、本書は571ページに及び、とにかく問題数が多くお得感があります。しかも特典として本番想定の試験問題が一回分付属しており、公式サイトからpdfをダウンロードすることができます。また、前述の認定講座での練習問題と比べて問題の質が本番に近いことも良い点です。
さらに、解答の解説が極めて丁寧であることもグッドポイントです。必須事項をまとめたカンニングペーパーくらいには数式等の解説がしっかりと付属しています。
https://ai4mdx.com/study_flow.html
こちらのサイトは新シラバスの内容が網羅されています。解説文がきれいにまとまっており、認定講座では理解できなかった内容を補うテキストとして有用です。コンテンツは浅く広く、といった印象なので確認用に参考とするのが良いでしょう。
こちらのサイトは主に画像処理系のモデルアーキテクチャに関する解説が充実しています。ResNetに始まり、MobileNetに至るまでの変遷の歴史にとどまらず、U-NetなどのセグメンテーションタスクやYOLOなどの物体検出タスクに関する解説も充実しています。 これも他には代えがたい、貴重な解説サイトです。
言わずもがな、日本一わかりやすくデータサイエンス系の解説をしていらっしゃるVtuberさんです。
特に、「強化学習の探検」シリーズはあらゆる参考書には代えがたいほど貴重な解説でした。
本番試験では損失関数やベルマン方程式に関する設問が(おそらく)高確率で出題されると思われます。
今年から始動した企画のようですが、結構ディープな内容まで論文の読み合わせと実装をしています。A3Cの再現実装については直後に受験した本番試験で出題されたので大変助かりました。。
私が受講したDeepSquareのテックブログです。トランスフォーマーの解説から最新論文の解説まで、わかりやすく、かつオーガニック3な文章で非常に有用です。E資格の範囲から外れる内容も多いですが、AIエンジニアとしての勉強という視点では非常に良いサイトです。
E資格対策としては、Transformerの解説記事が非常に有用です。Transformerの気持ちを理解するアプローチは人それぞれだとは思いますが、私はこの記事を読んではじめて「Transformer完全に理解した」状態にはなれました。
シラバス全体からまんべんなく出題される印象なので、漏れなく対策する必要があります。特に、私の時はトランスフォーマーと強化学習に関する基礎問題は複数出題されていましたので、基礎からしっかり勉強しておく必要があります。たとえばトランスフォーマーでは正しいアーキテクチャ図を選べとか、attention blockでのquery, key and valueの流れがどこからきているか等が問われます。強化学習についてはベルマン方程式・TD誤差の数式やDQNの誤差関数などが問われます。
新シラバスではトランスフォーマーに関する出題が増えていますので、特にケアする必要があります。内容自体は強化学習ほど難しくないので、対策はさほど難しくないと思います。
結局E資格は役に立ったか?と振り返ると、「コスパは微妙だが、久々に高難度資格に向けた勉強をしていい刺激になった」と言ったところでしょうか。E資格があれば即未経験でAIエンジニアになれるわけでは決してない(新卒を除く)ですし、資格試験が始まってから7年も経っているのに知名度もそこまでではありません。しかし、「かなりの金払ったんだからやるしかねえ」という気にはさせてくれるので、生活に少々ゆとりのある中堅世代がたるんだ生活にはっぱかけて新しいことに取り組むという目線では非常に良い機会になるのではないかと思います。
また、E資格の試験内容は数年に一度更新されています。昨年には更新が一度入り、音声解析がシラバスから外れ、Transformerベースアーキテクチャが登場しました。時代の流れ的に必然ともいえる変化ですが、同時に、2024年以前のE資格合格という肩書はTransformerを理解していない可能性がある以上陳腐化していると言わざるを得ません。あくまでE資格は念を習得するためにウイングさんが強制的にオーラの精口を開いたのと同じように、AIエンジニアという念能力者の道のきっかけに過ぎないと捉えるべきでしょう。そもそもAI業界自体、急速に物事が陳腐化していくので、これまた必然かと思います。